歯科コラム:歯周病
みなさんこんにちは!衛生士の鳥羽です。今回は「歯周病」についてお話していきます。
歯周病は、日本の成人の約8割が罹っていると言われている細菌感染症です。
最初は歯茎が腫れて血が出ることから始まります。この状態が続いてしまうと、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)が深くなり、歯を支える骨が溶けていきます。最終的には支えを失った歯が自然に抜けてしまう病気です。
そんな「歯周病」について3つの要点でお話しいたします。
①歯周病の原因
②歯周病と全身疾患
③歯周病を進行抑制、病状安定させるポイント
①歯周病の原因
歯周病の直接的な原因は歯垢(プラーク)です。このプラークは生きた細菌の塊で虫歯菌も歯周病菌も存在します。虫歯菌は酸素が多く酸性の環境つまり、歯の表面に住みつきます。歯周病菌はそれとは対照的で酸素が少なく、アルカリ性の歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)に潜んでいます。その為、歯周病が進行していく過程で歯周ポケットが深くなるということは、歯周病菌にとって最適な住処になってしまうのです。
歯周病菌の種類は11種類いますが、この細菌たちの世界にも階級社会が存在します。頂点に立つのはPg菌、Tf菌、Td菌の3種類です。この歯周病菌たちがいる方は、歯周病が進行しやすく重症化しやすいです。この歯周病菌たちは私たちが生まれた時からお口の中にいるのではなく、18歳以降に感染します。
では、どうやってこれらの歯周病菌はお口の中にやってくると思いますか?それは唾液によって感染していくのです。
つまり、パートナー ペットから 食具についた唾液 食べ物についた唾液です。そして一度感染した歯周病菌とは一生を共にしなければなりません。
しかし、この細菌たちに感染したらいきなり歯を支える骨が溶けて歯が抜けるわけではありません。歯周病が進行、発症しないときは歯周組織とプラークとの関係は均衡に保たれています。(シーソーをイメージしてみてください。)歯周病菌たちにとって好都合な環境、栄養素の増加によって歯周組織とプラークの均衡崩壊をしてしまい、歯周病は発症してしまうのです。
歯を磨いたら血が出るという方はいらっしゃいませんか?
これは、歯周病によって歯周ポケットの内面がただれている状態です。先程お伝えした歯周病菌たちの栄養素というのが、歯茎の炎症による出血です。赤血球のなかにはヘミン鉄と呼ばれる特殊な鉄分を含んでいて、この鉄分を餌として歯周病菌は爆発的に数を増やし活発になります。
②歯周病と全身疾患
多くの人が歯周病を患っているから「そこまで恐ろしい病気ではないだろう」と思っていませんか?実は歯周病は現在106種類もの全身疾患と関わりがあると言われています。
特に因果関係がはっきりしている病気が糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞です。糖尿病は歯周病由来の炎症性物質が血流に乗って全身を巡り糖尿病を悪化させるという報告があります。そして歯周治療によって糖尿病が改善した報告もいくつかあります。脳梗塞、心筋梗塞で動脈硬化病炎部を手術で取り除くと多数の組織から歯周病菌が検出され、歯周病菌が血流に入り込み全身に移行することがわかりました。
最近では認知症との関わりもあり、認知症の人の脳を調べたらpg菌がたくさん出てきたという報告もあるのです。
お口の中を健康にしておくことで、全身の健康にもつながるということが現代の医学ではわかってきているのです。
③歯周病を進行抑制、病状安定させるポイント
歯周病をこれ以上進まないようにするためには、歯科医院での定期的なお掃除と、ご自身でのブラッシングがポイントです。
①の最後に歯周病菌はヘミン鉄を餌として爆発的に増えるとお伝えしました。この炎症を止めるには、日々のブラッシングに98%懸かっているといわれています。みなさんに正しいブラッシングをおこなってもらうことで、出血はなくなり歯周病菌たちは飢餓状態になります。ただし、ブラッシングだけでは歯周ポケットの中までは磨けません。
そこで歯科医院での定期的なお掃除により、歯周ポケット内に潜んでいる歯周病の根本となる歯周病菌たちを少しでも0(ゼロ)に近い状態にします。しかし、どんなに綺麗に歯磨きができている人でも3ヶ月で再び細菌はリバウンドしますので3ヶ月に一回のサイクルで歯科医院に訪れることが大切です。
①でもお伝えしたように歯周組織とプラークとの関係が均衡崩壊崩壊しないようにすることが重要です。そこで大切になってくるのが、「日々のセルフケア」と「定期的な歯科医院でのメインテナンス」で、どちらか1つでも怠れば歯周病はすぐに再発してしまいます。
いつまでも健康なお口、身体でいるためにも私たちと一緒に頑張りましょう。