歯科コラム:歯と栄養について
こんにちは、受付の楠﨑です。
今回は管理栄養士の視点から、歯と栄養についてお話いたします。
丈夫な歯を作るためにはどのような食生活に気をつけたら良いでしょうか。歯はカルシウムで出来ているから、カルシウムを摂れば良いと考えがちですが、それだけではありません。
乳歯は、お母さんのお腹の中にいる頃から歯の芽が出来始めています。お母さんは妊娠前から、カルシウムはもちろん、鉄やマグネシウムなどのミネラル類や、ビタミンAや葉酸など、妊娠に必要な栄養素をしっかり蓄えておくことが元気な赤ちゃんを産むためにも、赤ちゃんの将来の歯のためにも大切になります。
近年、「新型栄養失調」という言葉を耳にするようになりました。新型栄養失調とは、摂取カロリーは足りているのにタンパク質やビタミン、ミネラルといった特定の栄養素が不足している状態を指します。自己流の食事制限ダイエットや偏食、高齢者では、麺類やお茶漬けなどさっぱりしたものだけで食事を済ませたり、歯を失ったことで硬いものを避けるようになったりといったことから、栄養が不足してしまうことが背景にあるようです。
日本人に不足しがちな栄養素として、カルシウム、鉄、マグネシウム、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンC、食物繊維などが挙げられます。実はこれ、ほとんどが健康な歯をつくるために必要な栄養素です。
・カルシウム 歯の原料となる。(牛乳、乳製品、大豆、大豆製品、干しひじき、小魚、桜エビなど)
・マグネシウム カルシウムの吸収を助ける。(魚介類、海藻類、納豆、玄米など)
・ビタミンA 歯の表面のエナメル質をつくる。(レバー、卵、うなぎ、チーズ、緑黄色野菜など)
・ビタミンC 歯の象牙質を強くする。(ブロッコリー、ピーマン、苺、じゃがいもなど)
永久歯は、乳歯の下で乳幼児期に少しずつ出来始めます。その為、この時期にカルシウムが不足すると永久歯を弱くする原因となります。肉、魚、乳製品、大豆製品、野菜など、バランスのとれた食生活の中でカルシウムを摂ることがとても大切です。
カルシウムの吸収率は他のミネラルとのバランスが影響します。インスタント食品や加工品など、リンを多く含む食品と同時に摂取するとカルシウムの吸収が阻害されてしまいます。牛乳や乳製品は、カルシウムの吸収率がとても高く、1回の摂取量も多いので効率的でおすすめです。
この他、体内でのカルシウムの吸収率を高めるにはビタミンDが有効です。ビタミンDは腸管内でのカルシウムの吸収を助け、骨の形成や成長を促進させる働きがあります。サンマ、鮭、イワシなどの魚類や、椎茸やキクラゲなどのキノコ類に多く含まれています。
これらの食品は出生から永久歯が生え揃う12〜15歳くらいまででとても大切になるので日々の食事からしっかり摂りましょう。
では、永久歯が生えたら、どのような食事に気をつければ良いのでしょうか。
お口の中では脱灰と再石灰化が繰り返し起こっています。脱灰は酸などにより歯の表面からミネラルが溶け出ることです。再石灰化とは、脱灰により歯から溶け出たミネラルを元に戻す唾液の自然治癒のメカニズムのことです。この再石灰化よって唾液が歯の表面のエナメル質の結晶を新しく形成し、初期虫歯を元の健康な状態に戻してくれます。
歯の再石灰化に必要なミネラルは、リンやカルシウムです。これらは唾液中に含まれて歯の表面に運ばれます。
リンはインスタント食品や加工品、タンパク質の多い食べ物に多く、肉や魚、卵、乳製品などに多く含まれます。普通に生活している状態ではよほど不足しない栄養素です。
カルシウムは、前述したように、牛乳、乳製品に多く、これらは吸収率も高いのでおすすめです。日本人は外国と比べ、食生活においてカルシウムが不足しがちなので、日常生活で積極的に摂るよう心がけましょう。
日本人の1日のカルシウム推奨量は、成人男性で約800〜900mg、成人女性で約600〜700mgです。これを牛乳に換算すると、男性で1日にコップ4杯、女性でコップ3杯分は飲むようにしましょう。(コップ1杯200mlとして)
これらの不足しがちな栄養素を補うには、クリームシチューがおすすめです。牛乳が苦手な子供も比較的食べやすく、定番野菜の人参にはビタミンAが、じゃがいもにはビタミンCが多く含まれます。ここにブロッコリーやきのこ、レンコン、鮭などを加えるとバランスの取れた栄養満点のシチューになるのでおすすめです。
調理の際には、人参はよく洗って皮を剥かずに入れたり、ブロッコリーは茎も皮を剥いて入れるなどすると、栄養を逃さず摂ることができます。
生えたばかりの永久歯はとても弱く、虫歯になりやすいため食事意外のことも注意が必要です。
・だらだら食べをしない
・よく噛んで食べる
・食べた後は歯を磨く
子供の頃から虫歯にならないための習慣を身につけて、健康で強い歯を目指しましょう。