歯科コラム:口は、健康の入口
こんにちは、衛生士の中川です。
突然ではありますが、問題です。日本国内で推定70万人。30~50代の男女に多くみられる病気は一体何でしょうか。ヒントは、男性より女性の方が罹患率が高いと言われています。
…正解は“関節リウマチ”です。皆さんの中にはこの病気に頭を悩まされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そもそも、関節リウマチとはどのような病気であるのか。まずはそこからお話していこうと思います。何故、歯医者のコラムで関節リウマチなのかと不思議に思われる方もいらっしゃるでしょうが、その理由は後程明らかにさせていただきますね。
関節リウマチとは、何らかの原因により自分の中に元々あるものを異物と見誤って自身を攻撃してしまう「自己免疫疾患」のひとつとされています。症状としては、左右対称に全身的に現れる関節の痛みが代表的で、うち90%は手の指や足の指のような小さな関節から起こることが一般的とされています。その他として、微熱や貧血、目、血管、消化管等にも影響が現れることもあります。“関節リウマチ”とは言うものの、実は異常がおこる部位は、関節を取り巻く滑膜という部位です。免疫の異常により滑膜は異物とみなされ、これを壊すために炎症細胞が集まり攻撃を始めます。その為、腫れや痛み、熱を生じるのです。この攻撃が続くと関節本来の形が壊れて変形が始まり、元の状態には戻せなくなってしまいます。これが関節リウマチのメカニズムです。
日本人のほとんどが発症している関節リウマチですが、何故なってしまうのでしょうか。実はこの病気には特定されている原因はありません。しかし、いくつかの要因が重なって発症します。ポイントとなるのは、遺伝的要因と環境的要因です。前者では、家族に関節リウマチの患者がいれば発症する“可能性”を受け継ぎます。後者の要因では、後天的な環境が加わり発症リスクが上がります。原因となる環境として、細菌やウイルス感染、過労やストレス、喫煙、出産などが挙げられ、なかでも相互的に関係するものが歯周病とされています。これこそ、ここの話題で関節リウマチが挙がった理由です。
歯周病原因菌のP.g菌は、アルギニンという元来体内にある蛋白をシトルリンという物質に変化させます。それを異物と認識して造られる抗体が、抗CCP抗体と呼ばれる物質です。造られた抗CCP抗体が体の中でシトルリン蛋白に対し、炎症反応や免疫異常を次々と引き起こすようになります。また、逆に関節リウマチに罹患されている方は治療薬の影響により、歯周病を進行させるリスクが上がります。さらに、シェーグレン症候群により唾液の分泌が低下し、虫歯や歯周病進行のリスクも上がります。この病気は関節リウマチと同時に併発することが多いので注意が必要です。
関節リウマチのように、口の中とは無関係なように見えて、実際は相互的に関係する全身的な疾患は他にもあります。今後の研究にて新たな疾患が挙がる可能性は十分にあります。今や歯科というジャンルは様々な分野から急速に注目を集めており、「お口の健康すなわち全身の健康」とも言われている程です。「歯医者=むし歯を治すところ」という認識は既に過去のものになっています。歯をキレイに保ち、全身的な健康も保っていきましょう!