歯科コラム:歯ブラシの選び方
こんにちは。衛生士の井上です。
4月上旬のコラムには補助清掃用具(1、2)について書かせていただきましたが、今回は歯ブラシの選択についてお話しします。
みなさんは歯ブラシを選ぶ時何を重視していますか?
毛の硬さ、大きさや形、持ち手ですか?あるいは価格でしょうか?
ドラッグストアなどでみる歯ブラシは沢山あり「どれを選んだらいいのだろう・・・。」と悩む方も多いと思います。
歯ブラシと言っても、「毛の硬さ」「毛の細さ」さらには「頭(ヘッドの大きさ)」も違います。その違いにはしっかりと意味があり、それぞれ皆さんのお口にあったものを選ぶことが大切になってきます。ぴったり合った歯ブラシを選ぶことで歯磨きの効率を上げることができ、合っていないものを選ぶことで磨き残しの原因になり虫歯や歯周病を引き起こしてしまう確率が高くなります。
お口に合った歯ブラシの選択理由
汚れ、つまり歯垢(プラーク)は複数の細菌がペリクル(※)上に付着したものであり、虫歯や歯周病などの最も代表的な病原因子となっています。また、誤嚥性肺炎や循環障害の全身疾患の発生にも影響を及ぼします。お口の大きさや歯の形、歯並びに歯ブラシが合っていないと、細かい隙間にある汚れに届かず磨き残しが出来てきてしまいます。そのため効率のいいプラークコントロールを継続させることが必要になってきます。
(※ 主に唾液および唾液糖タンパクに由来する有機被膜で、歯の表面を覆っているもの。)
歯ブラシの主な使用目的
①食物残渣の除去
②歯垢(プラーク)の除去
③歯肉マッサージ
④口腔粘膜の清掃
⑤口腔機能のリハビリテーション etc…
他にもいくつか目的がありますが主なものはこちら5つになります。
歯ブラシの特徴でお口に合った選択を!
〜手用歯ブラシ〜
最初にお話しした通り、歯ブラシには「毛の硬さ」「毛の細さ」「ヘッドの大きさ」、ものによっては持ち手の柄の部分が違うものもあります。そんな歯ブラシの特徴によってどんな人に合っているか、使い分けが出来るかを紹介していきます。
①毛の硬さ
歯ブラシの毛の硬さには「硬め」「ふつう(レギュラー)」「やわらかめ」があります。その中で最もおすすめされているのが「ふつう」の硬さになります。
汚れを落とすことだけを考えるのであれば「硬め」が1番だと言われています。
ですが、毛の硬さが硬ければ硬いほど、どんなに優しく磨いても歯茎を傷つけたり、すり減っていったりし、歯茎が下がってしまいます。それにより歯の質より弱い歯の根っこが見えてきてしまい、ご自身のブラッシングの圧により根っこを削っていってしまったり、虫歯や知覚過敏の症状も見られる場合があります。
それとは逆に「やわらかめ」は歯茎を傷つけにくいので、歯茎が腫れている方、重度の歯周病で出血しやすい方にはおすすめです。毛先のしなりが大きいので汚れを落とすのには時間がかかる為、丁寧に少し長めに磨くことで汚れをしっかり落とせます。
②ヘッドの大きさ
一般的には縦が植毛3列で小さめの大きさが適正サイズです。ヘッドが大きすぎてしまうと奥歯や細かい部分へ毛先が届きにくく、磨き残しが多くなります。特に男性より女性はお口が小さい方が多いため、小さいサイズを選ぶことをおすすめします。
ただ、ヘッドが小さすぎる歯ブラシだと細かい部分まで磨けますが、時間はかかってしまいます。大きすぎず、小さすぎないものを選ぶのが1番です。
③毛先の形
毛先の形にも種類があります。少し丸みを帯びた「円状(ラウンド)」、先の細い「テーパード」、平切りの「水平(シリンダー)」の3つが一般的に言われている種類です。
円状と水平は歯の表面についたプラークを効率よく落とすことが出来るので、虫歯予防に効果が高いです。虫歯の出来やすい方やお子さんにおすすめです。
テーパードは毛先が細くなっているので、歯と歯茎の境目に届きやすいです。そのため歯周病予防や進行抑制の効果が高いです。歯茎が腫れていたり、出血がある方におすすめです。
④柄の形(持ち手)
よく見る柄の形はストレートで突起のないものです。ですが、奥歯や見にくい部分を磨く時、磨きやすいように絵が少し曲がっているものもあります。持ってみて余計な力が入らず、手にフィットするものを選ぶのが1番ですが、あとは個人の好みになります。
歯ブラシの特徴でお口に合った選択を!
〜電動歯ブラシ〜
電動歯ブラシは、手用歯ブラシを上手く使いこなせない人や、矯正装置を装着している人などにおすすめです。電動歯ブラシは歯面にブラシが届きやすくなるよう、手用歯ブラシに比べてヘッドが小さく作られているものが多いです。
ただ、使用方法を誤ると歯茎や歯面に損傷をきたす恐れがあるので十分に注意が必要です。
電動歯ブラシは「電動歯ブラシ」「音波歯ブラシ」「超音波歯ブラシ」の3つに分けられます。
①電動歯ブラシ
振動や反転などの運動によってプラークを除去します。振動数は毎分2,000〜10,000回程度と、機種によってさまざまです。毛先が上手く磨く部位に当たるとプラーク除去効率が高いので、磨く時間の短縮が可能です。
操作方法が簡単なので、細かい操作が困難な場合や矯正装置を装着している方に適しています。
②音波歯ブラシ
振動数は毎分30,000回の振動による音波エネルギーでプラークを破壊する音波方式、微振動タイプの電動歯ブラシの1つです。激しい唾液などの水分の振動は、歯周病原細菌の線毛を破壊し、細菌の構造にダメージを与えます。これは電動歯ブラシにはない特徴です。
歯周病の予防、歯列不正がある場合、細かい操作が困難な方(小児、障がいのある方、高齢者 etc…)、デリケートな補綴装置装着者(インプラント、審美修復補綴物 etc…)などに適しています。
③超音波歯ブラシ
柄の部分あたりに内蔵された超音波発振子が生み出す超音波と手の動きによってプラークを除去します。プラーク除去の点においては、補助的に利用していきます。
音波歯ブラシと同じですが、特に歯周ポケットが深い歯周病患者にも適しています。
みなさんのお口に合う歯ブラシはありましたか?
まずは歯ブラシを選択する前に自身のお口の中を知ることが大切です。
お近くの歯科医院へ受診し、ご自身のお口の中の状況を把握し、自分に合った歯ブラシを選んでみてください!
尚、当医院でも患者様ひとりひとりにお口の中の状況の説明やご自身に合った歯ブラシなどをお伝えしております。
お気軽にご相談ください!